グリーンケミカルと電気自動車で始めるGX率先実行宣言:選ばれている対象製品の活用事例とデータ分析

なぜグリーンケミカルと電気自動車がGX率先実行宣言で注目されているのか
GX率先実行宣言は、「守りの脱炭素経営」から「攻めの脱炭素ビジネス」への転換を促進する重要な枠組みです。2024年度に経済産業省により創設されたこの制度は、企業が自らのGXへの取り組みを社会に表明する機会を提供しています。
本記事は、GXリーグのサイト上で公表されていた2025年3月13日時点のGX率先実行宣言に関する公開情報を分析したものです。現在のGX率先実行宣言において多く選択されている対象製品である「グリーンケミカル」と「電気自動車」に焦点を当て、様々な業種での具体的な活用事例と実践方法を解説します。これらの製品は汎用性が高く、多くの企業が比較的導入しやすいという特徴があります。
2025年3月13日時点の宣言企業データを分析した結果、電気自動車は全体の約35%、グリーンケミカルは約10%の企業が選択しており、業種を問わず幅広く採用されています。この記事を通じて、自社に最適なGX率先実行宣言の検討に役立つ情報をご提供します。
電気自動車:選ばれているGX対象製品
電気自動車が選ばれる理由
電気自動車がGX率先実行宣言で多く選択されている理由には以下が挙げられます:
- 幅広い業種で活用可能:営業車や社用車として様々な業種で導入可能
- 目に見える形での脱炭素化:社用車の電動化は社内外にアピールしやすい
- 技術的成熟度:他のGX製品と比較して導入実績が多く、リスクが少ない
- 補助金等の支援措置:導入時の支援制度が充実している
業種別の電気自動車活用事例
業種 | 対象行動 | 具体的な活用例 | 実際の宣言企業例 |
金融業 | 調達・購買 | 社用車の電動化、営業車両のEV化 | 株式会社ほくほくフィナンシャルグループ(ゴールド)、株式会社北海道銀行(ブロンズ) |
製造業 | 調達・購買 | 工場内車両や営業車両の電動化 | 住友化学株式会社(ゴールド)、JFEスチール株式会社(ゴールド)、大橋鉄工株式会社(ブロンズ) |
建設・不動産 | 調達・購買 | 現場監督用車両や営業車両の電動化 | 積水ハウス株式会社(ゴールド)、大和ハウス工業株式会社(ゴールド) |
サービス業 | 調達・購買 | 配送車両、店舗間移動車両の電動化 | (2025年3月13日時点で宣言なし) |
電気自動車に関する実際の宣言内容
積水ハウス株式会社(ゴールド)の宣言内容:
- 「2030年度までに、当社グループが使用する社有車のCEV導入率を100%に高める」
- 「Scope 1+2を2030年度までに2013年度比で75%削減」
株式会社ほくほくフィナンシャルグループ(ゴールド)の宣言内容:
- 「2030年度までに社用ガソリン車のうち50台以上をEVに切り替え」
- 「Scope 1+2を2030年度までに2022年度比で100%削減」
グリーンケミカル:多様な業種で活用可能なGX製品
グリーンケミカルとは
グリーンケミカルとは、従来の化石原料であるナフサからバイオ原料や廃プラスチックなどのグリーン原料へ転換することにより生産される化学品のことです。具体的には以下のようなものが含まれます:
- バイオマスプラスチック
- リサイクルプラスチック
- 植物由来の化学製品
- バイオマス由来の合成繊維
グリーンケミカルが選ばれる理由
- 幅広い用途:包装材、容器、事務用品など様々な製品に活用可能
- 消費者への訴求力:環境配慮型製品として消費者に直接アピールできる
- サプライチェーン全体での活用:製造から小売まで様々な段階で導入可能
- 段階的な導入のしやすさ:一部製品から徐々に切り替えることが可能
業種別のグリーンケミカル活用事例
業種 | 対象行動 | 具体的な活用例 | 実際の宣言企業例 |
飲料・食品 | 調達・購買 | バイオマスプラスチック製容器の採用 | サントリーホールディングス株式会社(シルバー) |
製造業 | 中間・最終製品製造 | バイオプラスチック製品の生産 | 住友化学株式会社(ゴールド) |
小売業 | 調達・購買 | 包装材や袋をバイオマス素材に切り替え | 株式会社高島屋(シルバー) |
サービス業 | 調達・購買 | 事務用品や備品にグリーンケミカル製品を採用 | (2025年3月13日時点で宣言なし) |
グリーンケミカルに関する実際の宣言内容
サントリーホールディングス株式会社(シルバー)の宣言内容:
- 「飲料ペットボトル製品に使用することで、Scope3の削減を行う」
- 「2030年度までにScope3を2019年度比で30%削減」
住友化学株式会社(ゴールド)の宣言内容:
- 「当社の技術開発力を活かした温室効果ガス削減貢献製品・技術等の開発・社会実装を推進し、2030年度までにGHG排出削減貢献量を1億トン以上にすることを目指す。」
- 「また、自社製品や生産におけるGHG排出量の削減にも取り組み、Scope1+2排出量を2030年度までに2013年度比で30%削減する。」
株式会社高島屋(シルバー)の宣言内容:
- 「2030年度までに、再生可能エネルギー比率100%を目指し、実質CO2排出量ゼロを実現する。」
- 「商品については、環境配慮型商品の品揃えを拡大し、売上高比率で10%以上を目指す。」
業種別・規模別の対象行動選択ガイド
GX率先実行宣言では、対象製品と共に「対象行動」を選択する必要があります。業種や企業規模によって最適な対象行動は異なります。
大企業と中小企業の対象行動選択の傾向
企業規模 | 主な対象行動 | 特徴 |
大企業 | 調達・購買、中間・最終製品製造 | 複数の対象製品・対象行動を組み合わせた包括的な宣言が多い |
中小企業 | 調達・購買、最終製品・サービスの購入・販売 | 単一の対象製品・対象行動に焦点を当てた宣言が多い |
業種別の対象行動選択ガイド
業種 | 推奨される対象行動 | 電気自動車の活用例 | グリーンケミカルの活用例 |
製造業 | 調達・購買、中間・最終製品製造 | 社用車や工場内車両の電動化 | バイオプラスチック製部品の製造・調達 |
小売・サービス業 | 調達・購買、最終製品・サービスの購入・販売 | 配送車両の電動化 | 包装材や袋のバイオマス素材への切り替え、事務用品への採用 |
金融業 | 調達・購買 | 営業車両の電動化 | 事務用品のグリーンケミカル製品への切り替え |
建設・不動産業 | 調達・購買、最終製品・サービスの購入・販売 | 現場監督用車両の電動化 | 内装材へのバイオマス素材の活用 |
ブロンズからゴールドへの段階的なグレードアップ戦略
GX率先実行宣言は、ブロンズ、シルバー、ゴールドの3つのグレードがあります。多くの企業、特に中小企業はブロンズから始め、段階的にグレードアップしていくことが推奨されています。
グレード別の特徴と要件
グレード | 要件 |
ブロンズ | GX製品・サービスの採用方針を掲げている |
シルバー | GX製品採用方針+Scope1~3削減目標を設定 |
ゴールド | 上記+GX製品採用の定量目標設定 |
電気自動車を活用したグレードアップ例
ブロンズ:
- 「当社は営業車両の電動化を推進します」
シルバー:
- 「当社は営業車両の電動化を推進します」
- 「2030年までにScope 1+2を2022年比で40%削減します」
ゴールド:
- 「当社は営業車両の電動化を推進します」
- 「2030年までにScope 1+2を2022年比で40%削減します」
- 「2030年までに社有車の80%を電気自動車に切り替えます」
グリーンケミカルを活用したグレードアップ例
ブロンズ:
- 「当社は包装材にバイオマスプラスチックの活用を推進します」
シルバー:
- 「当社は包装材にバイオマスプラスチックの活用を推進します」
- 「2030年までにScope 3を2023年比で20%削減します」
ゴールド:
- 「当社は包装材にバイオマスプラスチックの活用を推進します」
- 「2030年までにScope 3を2023年比で20%削減します」
- 「2030年までに包装材の50%をバイオマスプラスチック製に切り替えます」
まとめ:
グリーンケミカルと電気自動車を活用した「攻めの脱炭素経営」へ
グリーンケミカルと電気自動車は、GX率先実行宣言において多く選択されている対象製品であり、様々な業種の企業が比較的導入しやすいという特徴があります。これらの製品を活用することで、単なる環境対応ではなく、新たな顧客価値の創出や競争優位性の確立につながる「攻めの脱炭素経営」を実現することができます。
まずはブロンズグレードから始め、段階的にシルバー・ゴールドへとグレードアップしていくことで、自社のGX戦略を着実に進めていくことができるでしょう。
本記事で紹介した事例や分析データが、皆様のGX率先実行宣言の検討に役立てば幸いです。
本記事は、GXリーグのサイト上で公表されていた2025年3月13日時点のGX率先実行宣言に関する公開情報を分析したものです。宣言企業一覧や個別の宣言内容については、GXリーグのGX率先実行宣言に関する公式ウェブサイトをご参照ください。
https://gx-league.go.jp/action/declaration/
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